恋愛境界線
「遥、ごめん。実は――」
彼がもう帰ってきちゃったの、とでも続きそうな、どこか申し訳なさが滲にじむ純ちゃんの声に、最初が肝心とばかりに被せ気味に勢い良く挨拶をした。
「お邪魔してます。初めまして、純ちゃんの友人の芹沢遥です!」
「……何の真似だ、それは」
パステルカラーのポンポンが縦に連なった可愛らしい暖簾の奥から姿を現したのは、純ちゃんの彼氏ではなく渚だった。
「な、ななな、渚!?」
何でっ!?と、私が勢いよく純ちゃんの方に顔を向ける。
「ごめん……遥。今日あたり、遥が行くだろうから来たら教えろって、昼間に渚からメールがきてたの」
「俺の予想通りだろ?夜空けとけって言っても遥のことだから、逆に予定を入れるだろうと踏んだんだよ」
嵌められた……!渚にだけじゃなく、純ちゃんにまでも!!
「本当にごめんね……?私も本意じゃないんだけど、でも渚みたいな良い男に頼まれると断れなくて」