恋愛境界線
「どこが!?渚のどこが良い男なの?良いのは視力くらいで、しかも、マサイ族並みに良いくせに、職場では伊達眼鏡を掛けてる様な姑息な男だよ?」
現に、昼間会った時には掛けていたノンフレームの眼鏡が、今は掛けられていない。
「そこまで視力は良くねぇし、伊達眼鏡の何が悪い。こそこそ逃げ回ってる遥に、姑息なんて言われる筋合いはない」
「ほら!ほらほら!聞いた?口も性格も悪いんだよ?純ちゃん!!」
捲し立てる私に、純ちゃんは呑気に「遥も渚と一緒で、ビールで良い?」なんて言ってくる。
いくら今はただの友達でも、初恋相手であった渚に対して、純ちゃんは今でも甘いと思う。
純ちゃんがグラスに注いだビールを持ってくると、渚は来た時から手に持っていた紙袋を純ちゃんに差し出した。
「協力してもらったお礼も兼ねて、これ海外出張の土産」
「ふふっ、有難う。でもこれ、私にっていうより、遥向けのお土産だね」
そう言って、純ちゃんは早速お土産のチョコレートが入った箱を開けると、皆で食べようとテーブルの上に置いた。
「で、遥。お前は今現在、一体どこに住んでるんだよ?」