恋愛境界線
「何が許婚よ!お父さんもお父さんなら、渚も渚よ。馬鹿馬鹿しくて付き合いきれないったらないんだから」
親同士の仲が良いからって、お互いの子供同士を結婚させようなんて、そんなの戯言にしか聞こえない。
まだ小学校に入る前のこととは言え、冗談でもあんなこと言わなきゃ良かった。
『なぎさが、ずっといっしょにいてくれるなら、ケッコンしてもいーよ』なんて……!
子供にありがちな思い出話だけど、私にとっては思い出すだけでも恥ずかしい。
あのセリフを、うちの両親と渚の両親が微笑ましく見ていた顔も鮮明に思い出せる。
あの瞬間、私は渚と許婚の仲にされてしまったことは間違いない。
子供のあんなセリフをいちいち真に受ける両親たちもおかしいし、未だに素直に受け入れてる渚もおかしい。
「きぃー!!おかしい人間ばっかで、こっちまで頭がおかしくなりそう!」
頭をガシガシと掻き乱す私に、渚が「お前が一番おかしいよ」とツッコんできた。
純ちゃんは、そんな渚に甲斐甲斐しくビールを注ぎ足してあげている。