恋愛境界線
……駄目駄目駄目!
危うく同情しそうになったけど、ここで同情したところで、足元を掬われる結果になることは、今までの付き合いで学習済みだ。
「純ちゃん、私もそろそろ帰るね。悪いけど、渚のこと頼んじゃっても良いかな?」
「そうだね。起こすのも可哀想だし」
「もし彼氏さんに誤解されそうになったら、私のスマホに連絡して。私から彼氏さんに、ちゃんと説明するから!」
純ちゃんが「はいはい」と言いながら、玄関先で私を見送ってくれた。
若宮課長には前以って、帰りが遅くなることを伝えておいたけど、腕時計を見れば、今日は残業せずに退社したこともあってか、まだそんなに遅い時間ではなかった。
電車に揺られながら、若宮課長はもう夕飯を食べたかな、なんて考える。
純ちゃんの所では、軽くつまむ程度にしか食べなかったから、少し食べ足りない状態に、帰ったら冷蔵庫にある物で適当に何か作って食べようと、心持ち帰路を急いだ。