恋愛境界線

「本当に私に悪いと思っているのなら、今夜は課長がご飯を作って下さいね」と言うと、若宮課長は、「君は本当にちゃっかりしてるな」と言いながらも、ご飯を作ってくれた。


「あっ、若宮課長、ついでにお酒も飲みたいです!気分的には芋焼酎なんですけど」


「君の様な年齢の女性の口から、芋焼酎だなんてセリフ、私は初めて聞いたよ……」


そりゃあ、若宮課長の前では皆、カクテルとか可愛らしいお酒の名前しか口にしないでしょうとも。


私が、若宮課長の前じゃなければ、「芋焼酎が飲みたい」なんて言ったりしない様に。


「芹沢君、芋焼酎はないけど、ただの焼酎ならあるよ?貰いものだけど」


「じゃあ、それで生グレサワーを作りません?丁度、グレープフルーツも炭酸水もありますし」


「どうしてそこで生グレに走るのか、その思考回路が私には理解出来ない」


私には、課長がどうして女装するのか、そっちの方が理解出来ません、と心の中でひっそりと反論する。


課長は、「焼酎をそのまま飲めば良いのに」と言いながら、絞り器を用意してくれた。


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