恋愛境界線

早速、半分に切ったグレープフルーツを絞り器で絞ろうとしたら、果汁が飛んできた。


「わっ……!目に入った!!」


思わず擦ろうとした私の手を、若宮課長が背後から掴んで止める。


「その手で触ったら余計に沁みるだろう。馬鹿か、君は」


最後の一言は明らかに余計だと思う。


そして、課長が私の正面に回り込んだかと思うと、人差し指の関節部分が私の目元に触れた。


「まったく……」と言いながら果汁を拭ってくれた直後、今度は親指の腹の部分が私の唇に触れた。


目元より、少し強めに掠め取られる。


自分の唇に触れられるその動作に、なぜか心臓がドキドキしてくる。


「あ、ありがとうござい、ます……」


若宮課長相手に何、ドキドキしてんだろ。


経験値が低くて、男の人に触られることに免疫がないから、こんな風にドキドキしてしまうのかもしれない。


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