恋愛境界線
「ちょっと代わりなさい。このまま君に任せたら、この辺一帯を汚されそうだ」
そんな憎まれ口を叩きながら、若宮課長が私の手からグレープフルーツと絞り器を奪う。
この変なドキドキを落ち着かせる為、私はグラスに焼酎を少しだけ注いで一気に飲み干した。
「……君は何をやってるんだ?絞ったから、早くグラスをくれないか?」
「は、はい、只今!」
氷を加え、空になったグラスの1/3程度まで焼酎を注ぎ足して、課長へと手渡す。
果汁をグラスに移し、若宮課長が更に残りのグレープフルーツを絞っている間に、私はグラスの中身を掻き混ぜて、そこに炭酸水を加えた。
そうして出来上がった生グレープフルーツサワーで乾杯をする頃には、あの変なドキドキはすっかり収まっていた。
「ところで、若宮課長はどうして、今日は帰りが遅かったんですか?」
「まぁ、色々と。君に話す様なことじゃない」