恋愛境界線
人を外で待たせておきながら『君に話す様なことじゃない』って、どういう了見なんだか。
相変わらず、会話を弾ませる気ゼロな返答をする人だ。
「じゃあ逆に、課長は私に何か訊きたいことないですか?今日は何でも答えますよっ」
課長に主導権を渡すことで会話になるだろうし、私が自分のことを話すことによって、課長のことも色々と聞き出せるかもしれない。
「私が君に?……いや、特にない」
何だろうこの人。ここまで会話が弾まないのも一種の才能みたいに思えてくる。
「一つくらい、あっても良さそうなものですけど。全くないですか?」
「じゃあ――君は、どうして我が社を希望したんだ?」
「え、面接?これ、面接ですか?」
「何か質問はないかというから、一番気になったことを訊いてみただけだ」
一番気になることが入社動機って、どんだけ私のプライベートに興味がないんですか?