恋愛境界線
scene.09◆ 次の信号が青になるまでに
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「それから、パクト用ケースのデザイン案についてですが、諸事情により次回の会議に持ち越したいと思います」


昨夜からプレゼンをする気で意気込んでいた私は、たった今、課長から発せられた言葉に驚いた。


今日は他部署の人たちを交えての合同会議で、ここで皆にあのデザインを披露して、正式に採決を取られるはずだったのだ。


「あのっ、すみません。若宮課長、ちょっと待って下さい!」


突然声を上げた私に、会議に参加していた全員の視線が集まる。


「芹沢君、君の話は後で聞きます。他に何かある方――いない様なので、これにて今日の会議は終了とします」


立ち上がった面々がぞろぞろと会議室を出て行く中、私はずっと課長に視線を向けたままでいると、課長は開発部の人と一言二言交わした後、私の方へ近寄ってきた。


「若宮課長!どうして、次回に持ち越しになったんですか?」


「──そのデザインは、却下になったからだ」

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