恋愛境界線
「それは……、特に理由があるわけじゃないけど……」
どちらかと言えば、渚の所でお世話になるよりも、このまま若宮課長の所でお世話になっている方が不都合な面は多い。
だって、若宮課長は私の直属の上司で、一緒に住んでいることが職場にバレた場合、色々と都合が悪い。
社内恋愛は禁止されていないけど、バレたら仕事がやりづらくなるのが目に見えてる。
例え、男女の仲じゃないと説明したところで誰も信じないだろうし、そういう意味ではまだ渚の方が都合が良い……のだけれど……。
「芹沢君、とりあえず私は部屋に戻ってるよ」
「え、でも……ご飯」
「何がご飯だ。今はそれどころじゃないだろう」
緒方君とちゃんと話し合いなさい、と言うと、若宮課長は踵を返した。
「あーもうっ!ここを出て行くにしても、私は渚の所へは行かないから!」
渚に向かってキッパリと言い放つ。
「いざとなったら純ちゃんの所に行くから、渚はもう帰って!」
純ちゃんの所には彼氏さんがいるからお世話になるつもりはないにしても、今はこう言うしかない。