恋愛境界線
「まず第一に、課長は誤解しているようですが、純ちゃんは男ではなく女ですから!」
「だけど、緒方君は男だと……」
「以前までは男性でしたけど、大学生の時に女性になったんです。まぁ、その辺の詳しい事情はプライバシーもあるので省きますけど」
純ちゃんがある日突然、女の子になって目の前に現れた時の衝撃は今でも忘れられない。
だけど、それは私たちの友情には何の障害にもならなかった。
いかに純ちゃんが女の子になりたかったのか、それを知ってしまったら、今までその気持ちに気付けずにいた自分が悔しくて、驚くほどすんなりと女の子の純ちゃんを受け入れていた。
それ以降、純ちゃんは私にとって、他の女友達よりも女友達として一番近しい存在になった。
それに、純ちゃんは中身が誰より女性らしく、外見だって元々中性的だっただけに、今では昔は男だったと言われても信じられないくらいに可愛い。
純ちゃんの親友だった渚は、未だにそんな純ちゃんを認めていない節があるから、たまにあんなことを口走ったりもする。
そして、それが私の地雷だってことも判っているはずなのに、懲りず今日みたいに見事に踏み抜いてくれたりもするのだけれど。