恋愛境界線
「……何だって?」
「だから、若宮課長がゲイだからですよ。そうじゃなければ、いくらその手の心配はいらないって言われても、さすがに男の人の部屋に転がり込んだりしませんよー」
そんな、ドラマや漫画じゃないんですから、いくら私でもそれはないです!ないない!
そう笑いながら一息に告げると、対照的に若宮課長の顔が一気に曇った。
「……あの、もしかして、カムアウトしていないのに、私が知ってたことがショックでしたか?でも大丈夫ですよ、私は気にしませんし、誰にも言いませんから!」
そりゃあ、今まで周囲にいなかったから最初は戸惑ったりもしたけれど、だからといって、それに対する差別や偏見はない。
「……もう一度聞くが、私が何だって?」
「えっ、だからgayと。あっ、それともhomosexualと言うべきなんでしょうか……?」
「ネイティブに発音しようが、別の呼び方をされようが、私はゲイでもなければ、ホモでもない!断じて、だ!!」
熱り立った課長が、勢い良くソファに拳を打ちつけた。
「別にゲイに対して何も思うところはないが、昔から君みたいに勝手に勘違いして、からかってくる人間には心底辟易する!」