恋愛境界線
その態度にちょっとだけムッとして、つい私まで声を荒げてしまう。
「別にからかってません!性的指向は個人の自由ですし、悪いことでもありません。だから、私にまでそんなムキになって隠さなくてもいいじゃないですか!」
本人にとっては他人に踏み込まれたくないセンシティブな問題だろうけど、一緒に暮らす内に距離が縮まった気がしていただけに、若宮課長のこの態度には拒否られてる様で寂しく感じてしまう。
「一体全体、何だって君は次から次へと、そう馬鹿なことばかり言うんだ?私が一度でも、男を好きだと言ったか?」
「言いましたよ!言ったじゃないですか!以前に、『女性には興味がない』って」
つまりは、女性には興味がなくとも、男性には興味があるということでは?
反論があるならどーぞ、といった態度で課長を正面から捉えると、若宮課長はげんなりした表情で深々とため息を吐き出した。
「違う。『女性に興味はない』と言ったんだ」
「……それって、同じことじゃないですか?」
もしかして、『(三次元の)女性に興味はない。二次元の女性にしか』とか、そういう意味合いだった、とか……?
「女性に興味はないが、男性にも興味はない!これで納得したか?」
なんって紛らわしい物言いをする人なんだ!
「納得出来ません」と言い切ると、またしても「何?」と、矢の様に鋭い視線が飛んできた。