恋愛境界線
「そんなわけがないとは、どういう意味だ?」
「だって、深山さん!深山さんの件は?」
「深山くん?彼が、何か関係があるのか?」
訝る課長に、「あります!大ありですよ!」と答える。
「課長、女子社員のお誘いは否応なく断るのに、深山さんとは二人きりでよく飲みに行くそうじゃないですか!」
「それが?」
もし惚けたフリをしているのだとすれば、課長の演技力はベテラン俳優顔負けだ。
「そもそも、うちに限ったことじゃなく、企画と営業といえば仲が悪くて当たり前、例えるなら水と油の関係じゃないですか。それなのに、深山さんのことをよく褒めてますし、課長の接し方はどう見ても、好きな人に対するそれですよね!?」
「そんなわけがあるか!何だってそう君は思い込みが激しく、そうまで私をゲイにしたがるんだ!?」
私のセリフを遮り、本日二度目となる若宮課長に拳を打ちつけられたソファに目を遣り、『可哀想に……』と同情する。
深山さんがソファだったら、絶対にこんな扱いはしないはず。
私がソファだったら、確実に今と同様の扱いをされただろうけど。