恋愛境界線

「じゃあ、本当の本当に、課長はゲイじゃないんですね……?」


「君は何なんだ、一体。私がゲイじゃないと困ることでもあるのか!?」


あるんです。そりゃあ、もう大いに。


「だって、若宮課長がゲイだと思ってたから、薄着でウロついたり、寝起き姿だって平気で(さら)してたのに……」


「私がゲイかどうかということと、君が私の前でみっともない姿を曝していたことは、まったく何の関係もないだろう?」


私の中では《若宮課長=ゲイ》であることが前提としてあったからこそ、課長を一人の男性として意識しなくて済んだというか、女同士感覚みたいな感じで、その辺のことは気にせずに済んだのに。


課長がゲイじゃないと判った途端、キャミとショーパン姿で寛いだことや、寝癖やスッピンを堂々と晒したこと、果てには、同じベッドで一度ならず二度も一緒に寝てしまったことへの羞恥が一気に襲いかかってきた。


「あぁ、もう!恥ずかしくて死にそう……!」


「訳が判らないな。君が恥ずかしいのは、今に始まったことじゃないだろうに」


……フォローになっていないし、フォローする気もないんですね?


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