恋愛境界線
君は今後、妄想を暴走させないことだなと言って、ようやく呪詛もどきを唱えるのを止めてくれた。
「……はぁ。でも、最後の最後に課長の謎が解けて、何だかスッキリしました」
へらっと笑ってそう告げれば、「最後?」と課長が私のセリフに僅かに反応を示した。
若宮課長がゲイじゃないと判ったからには、もうここに住まわせてもらうわけにはいかない。
それに、最初に提示された条件の内、既に二つが条件から外れたことになる。
「滞在期間は改修工事が終わるまで。ここで暮らすことは職場では一切口外しないこと――でしたよね?」
後者については、渚のことがある。直接私がバラしたわけじゃないけれど、第三者にバレてしまったという事実は変わらない。
住まわせてもらうわけにいかないというよりも、若宮課長がもうここに住まわせてくれるはずがない。
「今から荷造りをして、すぐに出て行きますね!」
荷造りなんて言ったって、最初から荷物なんて殆どない身の上だ。
きっと、10分と掛からないで支度が整ってしまうだろうと思ったら、部屋に向かう足取りが重くなった。