恋愛境界線
「とりあえず今日は、ネカフェかビジネスホテルの二択で迷ってる最中です」
その後は、2、3日でいいから純ちゃんの所に泊めてもらえる様に頼んでみるつもりでいることを話す。
「それってつまりは、何も決めてないってことじゃないか」
今すぐにでも出て行くと言ってるのに、これ以上何が不満なのか、若宮課長はそう言って、むすっとした表情で黙り込んでしまった。
「あのー、若宮課長?大丈夫です。もうこれ以上、若宮課長にご迷惑はおかけしませんので……」
「かけないというより、これ以上かけようがないだろう」
「はぁ、仰る通りで。それにしても、去り際まで嫌味ですか」
ものすっごく好意的に受け取るならば、もしやこれは、叱咤激励的な、若宮課長なりの餞別か何かなんだろうか……。今のところ、叱咤しか含まれていないけど。
「これからは、心が折れそうな時は課長の嫌味を思い出して、こんにゃろー精神で頑張りたいと思います!」
課長の嫌味を笑って受け止め、明るくそう告げた途端、フクロウの鳴き声を上回る深さの「ほぉ……」という意味深な声が上がった。