恋愛境界線
「……芹沢君って鋭い様でいて、鈍いんだね」
「それを言うなら、鈍い様に見えて鋭いと言って下さい」
「別に、どっちでも良いけど」
課長が口を噤んだことで勝った気分になり、えっへん!と、得意げに両手を腰に当ててドヤ顔を向ける。
課長は私にチラリと視線を向けた後、一口だけコーヒーを啜って再び新聞に視線を落とした。
「一時は女性と付き合ってしまったこともあるけれど、それは気の迷いだったと思っている。だから現在は、さっき言った様に『女性に興味がない』ってことに変わりはない」
新聞に目を向けたまま話しているこの態度からは、私に対しても微塵も興味がないっていうことが伝わってきた。
だけど、どうしてこれほどまで、頑なに否定するんだろう?
こんなにも女性には興味がないと主張してくるなんて。
……一体、何アピールですか?