恋愛境界線

ここに住まわせてもらう時なんて課長のことを脅してしまったし、迷惑だって沢山かけたのに。


嫌われて当然だと思っていただけに、『嫌ってはいない』の一言は予想外で。


驚きに目を(みは)る私に、若宮課長はどこか吹っ切れた様な表情で小さく口元に笑みを浮かべた。


「さっき、君に言っただろう?」


「さっき、とは?『君は、私のことを心の中でコノヤロウとか思っていたんだな?』の下りですか?」


「なぜ、そこをチョイスする。『迷惑はこれ以上かけられようがない』の下りだ。一度乗りかかった船だ、君のことは上司である私が最後まで面倒を見よう」


これまた予想外に面倒見がいいというか、ボランティア精神に溢れてるというか。


「もしかして、課長って私のこと、案外好きだったりします?」


「君はつくづく極端な考え方をするんだな。嫌ってはいないが、好いてもいない」


万が一にも間違いは起こらないと言ったことに、微塵の揺らぎもないから安心しなさい、とまで言われた。


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