恋愛境界線
「へぇ。芹沢君は仕事よりもそういうことに興味がありそうに見えるのに」
意外だと言いたげな、嫌味ったらしい口調で「それはそれは」なんて言ってくる。
「それに、働いてる時の顔は、好きな人にはあまり見られたくないですし……」
「君は、妙なところでロマンチストだな」
これって、褒められてるんだよ、ね?
そう思ったら、照れくさくなって口元がムズムズしてきた。
「じゃあ、お互いに社内恋愛しない主義ってことで、変な心配も要らないことですし、今後も存分に課長の厚意に甘えさせて頂きますので、よろしくお願いします!」
またお世話になりますという意味で、ぺこりと頭を下げる。
「君の場合は最初から十分に甘えてるから、少し遠慮するくらいがちょうど良いと思うが」
そう返してきた課長の声色は、少しも冷たいものじゃなくて。