恋愛境界線
「それじゃあ、今後は課長のベッドにお邪魔しないように気をつけます!あと、服にシミ等が無いように、身だしなみにも気を配ります。それから……あとは、えっと」
自分の反省すべき点を挙げる私に、若宮課長が小さく笑った。
「それは、どれも大人の女性として、社会人として、当たり前のことじゃないか」
「そう、です……よね」
何だろう。今、心臓が鳴った様な、この感じ。
課長が笑ってくれると、つられて私まで笑いそうになる、この感じは――。
「この雨だと出掛けるのも億劫だし、今日の夕飯は在るもので簡単に何か作ろう」
「じゃあ、私も手伝います!とりあえず、荷物だけ部屋に置いてきますね」
キャリーバッグを手に、私に与えられた空き部屋へと戻り一旦ドアを閉めると、いつもより鼓動が速まっていることに気付く。
ほぅ、と静かに息を吐き出すと、ドアを一枚隔てただけなのに、課長と一緒にいた時よりも酸素が濃くなった様な気がした。