恋愛境界線

「ほら、渚も食べてよ!たこ焼き、焦げちゃう」


昼食を摂りながら話し合おうと思って、何を食べようか考えていたら、突如たこ焼きが食べたくなり、渚のマンションに置かれっぱなしになっていた私の荷物の中から、たこ焼き器を引っ張り出してきたのは数十分前のこと。


次々と目の前で焼き上がっていくたこ焼きを、渚はまだ一つも口に運んでいない。


「何で、こういう真面目な話をしようって時に、たこ焼きなんだよ。おまけに、口の端に青のりを付けてるとか、緊張感なさ過ぎだろ……」


「じゃあ、こういう時はどんな料理が相応しいっていうの?懐石?フレンチ?」


そう言い返すと、短く舌打ちをされた。


大体、私が急にたこ焼きを食べたくなったのは、渚のせいでもあるのに。


むすっとしている渚がタコに似ているから――じゃなくて、学生時代によく二人でたこ焼きパーティをしたからだ。


友人たちと大人数で普通のタコパをした思い出もあるけれど、渚とはチーズやキムチを入れた変わり種を色々試したり、大量のわさび入りたこ焼きでロシアンルーレットをしたり、今思うとしょうもないことでいちいち二人で笑って、騒いで、盛り上がった思い出がある。


それを懐かしいと思ってるのは私だけで、渚はそんな思い出に愛着なんてないんだろうなぁ。


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