恋愛境界線
「じゃあ、俺が知り合いの不動産に頼んで、どこか良さそうな所を手配してやるよ」
「結構です。どうせ、このマンションの隣室とか、この真上の部屋とかでしょう?こんな家賃の高い所なんて無理だし」
「そんなこと言ってる場合か?上司だろうが何だろうが、相手は男で、純とは違うんだぞ?」
「判ってます。純ちゃんは女の子で、若宮課長は男の人だ、って」
純ちゃんは女の子、という所を強調しながら、ジロリと渚を睨む。
もう少しで私の地雷に触れると思ったのか、そこで渚は一瞬言葉を詰まらせた。
「でもね、若宮課長はその手の心配は要らないというか、ものすごく信頼出来る人なの」
若宮課長は私には関心がないし、私も若宮課長に対して恋愛感情なんてない、と説く。
「だから渚、今回だけはもうこれ以上、どうこう言わないで」
「……じゃあ、おじさんたちにチクるって言ったら?」
「渚とは一生口を利かない。幼なじみの縁もそれまでだと思って」