恋愛境界線
口を利かない、だなんて子供染みた脅し。
だけど、それはただのハッタリなんかじゃないってことくらい、幼い頃から私を知っている渚には判るはず。
私の冗談と本気の境界線を、付き合いの長い渚はちゃんと知っている。
「……そっち方面でそこまで信頼を寄せられるってのも、俺だったら男として空しいけど、でも」
この場合は良いことだよな、と独り言の様に呟いて、少しばかり焦げてしまったたこ焼きに手を伸ばす。
私には渚の言ってることはよく判らなかったけれど、納得してくれたことだけは判った。
納得してもらえたことにホッと胸を撫で下ろし、私もたこ焼きを頬張る。
最後に油をほんの少し回し入れた為、外側がカリカリしていて、また違った食感が楽しい。
「遥の荷物はこのままにしとくから、次に住む所が決まった時にでも引き取りにきな」
「判った。渚、ありがと」
「だから、青のり付いてるって……」
渚は自分の唇の左端を指さして、ここ、と今度は付いている場所を教えてくれる。