恋愛境界線

「その反応だと、未だに相当落ち込んでんだろ?」


若宮課長のお蔭で少しは浮上出来たものの、もう平気と強がるのも、今はまだきつい。


薄れることのない悔しさに心の中をこれ以上浸食されたくなくて、話題を僅かに逸した。


「それより、どうして『気を付けろ』で、この件を思い出したわけ?」


「それがさ、似た様なことが以前にもあったみたいなんだよ」


パクトケースのデザイン案を他社へ流出させた人物が未だ判明しないどころか、見当もつかない現状で、これは大きなヒントになるかもしれない。


「ねっ、それって、いつのこと?」


犯人が同一人物とは限らないけれど、それでも私は渚の話題に食いつかずにはいられなかった。


「若宮さんが《リュミナリスト》のプロジェクトに携わってた時だから……、三年前か?」


「その時もパクトケースのデザイン画が流出したの?」


「いや、その時はスチルだったみたいだけど」


スチール写真をパクったところで、相手側にどれだけのプラス要素があったというのだろうか。理解不能だ。


< 220 / 621 >

この作品をシェア

pagetop