恋愛境界線

「今回のプロジェクトはさ、前回以上に大きなプロジェクトだし、今後もまたこういうことが起こらないとも限らないだろうから、気を付けろよ?」


渚の言う通りだ。パクトケースの一件だけでは済まないかもしれない。


「今後は、どんな些細なことにも気を抜かない様にするっ!」


「すっげー意気込んでんな」と、私の様子に笑いを浮かべた渚は、「その調子で頑張れ」と、さり気なく励ましてくれた。


これが若宮課長だったら、きっと小言で返されたんだろうなぁ。


しかめっ面で、『最初から、どんな些細なことにも気を抜かない様にするのが当然の務めだろう』とか言って。


「それにしても、若宮課長、パクトケースのデザインをパクられた時、全然そんなこと話してくれなかったなぁ」


そういうことを軽々しく話す様な人じゃないって、知ってはいるけれど……。


「──あぁ、そういえば! 以前、スチルの件で責任を負ったのって、確か若宮さんの婚約者じゃなかったかな」


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