恋愛境界線
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「それでは、パクト用のケースはこの案で進めていき、アイシャドウやチークといったそれぞれ別売りのケースも、同様のデザインで展開したいと思います」


「次に、製造・開発の方から、課題になっていたリキッドの件で、進捗状況の報告をお願いします」


他のデザイン案が会議で無事に通り、会議は着々と進んで行く。


「サンプルをお手に取って頂ければ判るかと思いますが、肌馴染みが良くなる様に保湿力を前回よりも向上させ、ご指摘頂いていました、秋冬用にしてはつけ心地が軽すぎるという点を改善しました」


その言葉に、皆が自分の目の前に置かれている小さなポリ容器へと手を伸ばす。


「うん。柔らかなテクスチャーで、密着性も高くなってる」


「そうね、伸びも良いし。夏場なら前回くらいのサラッとしたつけ心地の方が良いけど、冬はこれくらいじゃないと」


口々に感想を言い合い、途端に室内がザワつき始める。


私も試しに手の甲にうっすらと伸ばしてはみたものの、パクトケースの一件が尾を引いて、感想よりもため息が口から漏れ出た。


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