恋愛境界線

予定よりも長引いてしまった会議を終えると、皆が退室する中、私一人だけが名指しで若宮課長に呼び止められた。


「芹沢君、ちょっと」


「はい。何ですか?」


「何でしょうか?だろ」


相変わらず細かいですね……と思ったけれど、人の目があるからそんな風に言い返すことも出来ない。


「すみません。何でしょうか?若宮課長」


「今日の会議は全然集中していなかったみたいだけど?ため息なんて、もっての|外《ほか
》だよ」


それはそうだけど……。いくら予想していたこととはいえ、いざ実際に他のデザイン案の採用が決定したとなると、さすがに落ち込みを隠せない。


どうしようもないって判ってるけど、頭と心は別というか。


それに、気が散漫になっていたのは、それだけが理由じゃない。


昨日、渚から聞いた言葉が頭から離れないからだ。


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