恋愛境界線
渚は、恋人じゃなくて“婚約者”って言ってたけれど、若宮課長に婚約者。
女性に興味がないときっぱり言い切っていた若宮課長には、ただ付き合っていただけじゃなく、結婚まで考えた女性がいたってことで。
驚きが大き過ぎた所為なのか、ずっとそのことが頭から離れてくれない。
若宮課長がそこまで想いを寄せるなんて、一体どんな女性だったのか気になって仕方がない。
どうやら、私は自分で思っている以上に、野次馬根性というか、好奇心が強いらしい。
「芹沢君、聞いてるのか?聞いているのなら、返事」
「……はい。以後気を付けます」
「本当にそう思っているのか?とりあえずそう言っておけばいいとでも思ってるんじゃないだろうね」
「どういう意味ですか?」
「言葉の割に、反省の色が見られない」
室内にはまだ何人か残ってるというのに、何も人目がある所でここまで注意してこなくてもいいのに……。