恋愛境界線
自分のデスクに戻ると、さっきの合同会議でパクトケースのプレゼンをした浅見先輩が、おずおずと近寄ってきた。
「大丈夫?相当ヘコんでたみたいだったけど。まだ気にしてる……よね?」
先輩に恨みがあるわけではないから、「大丈夫ですよ」と明るく答える。
無理をして明るく振る舞っていると思われるのも嫌で、更におどけてみせた。
「課長には、集中してないって注意されちゃいましたけど。あの人、ホント容赦ないですよねー」
「課長は、自分にも他人にも厳しい人だからね」と、先輩が苦笑する。
「まぁ、仕事に関してはシビアだけど、でも頑張ってる人は見放さない人だから」
だから、頑張ってた芹沢さんのこと、内心では気にかけてると思うよと言って、励ます様に私の肩をそっと叩いた。
課長がそういう人だってことを私も判っているけれど、素直に頷くのも悔しくて、わざと拗ねてみせる。
「それなら、もっと判り易く気にかけてくれれば良くないですか?」
「これはオフレコよ?実は若宮課長、パクトケースのデザイン流出の件で今朝、部長代理に呼ばれたらしくて」
──芹沢さんのこと、庇ってたみたいよ。