恋愛境界線
『デザイン案が外部に流出したことが、上の耳にも入ったみたいで。ほら、今の部長代理って、なにかっていうと責任逃れするタイプじゃない?功績は自分の手柄、失態は部下の責任にする嫌な奴の典型っていうの?』
たった今、先輩から聞いたばかりの話に、居ても立ってもいられず若宮課長の元へと足を急がせる。
『だから、今回のことも自分に火の粉が飛んでくる前に、責任の所在をハッキリさせておこうって魂胆で呼び出したみたい。担当していた芹沢さんに不手際があったんじゃないか、もしかしたら芹沢さん本人が流したんじゃないかって』
浅見先輩から聞いた話が頭の中に響く。
『もう最悪なことに、疑わしきは罰すの勢いで、とにかく責任を取らせるって言い出した際に、若宮課長が止めてくれたみたい』
ちゃんと管理出来なかった私にも責任はあるのに。
『芹沢さんに落ち度はなかったって。責任は上司である自分が取ります、って』
──そう言って、ちゃんと庇ってくれたみたいよ。
それなのに、若宮課長はそんなこと、私に一言も言わなかった。
部長代理に呼び出されたことすら言わないで、陰では私なんかを庇ってくれてたなんて……。