恋愛境界線
scene.13◆ 好きなの?
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若宮課長が以前付き合っていた人は、支倉さん。


そして、その支倉さんこそが、若宮課長の元婚約者――。


ドクン、と心臓が大きく脈打つ。


まさか、と否定したいのに、繋がった一本の線からは綻びが見つからない。


(たま)らず一歩後退(あとずさ)ったその瞬間、運悪く背後を通りかかった人にぶつかってしまった。


とっさに上げてしまった「きゃっ……」という短い悲鳴に、しまった……と、たじろぐ。


案の定、声で私の存在に気付いたらしい若宮課長が、会議室からすぐに顔を覗かせた。


「芹沢君?今声がしたけど、何かあったのか?」


まさか、「覗き見してて二人の関係に驚き、一歩下がった拍子に人とぶつかってしまいました」なんて、馬鹿正直に言うわけにもいかない。


「コケた拍子に人とぶつかってしまっただけで……まぁ、よくあることですので気にしないで下さい!」


あはははは、と陽気に笑って誤魔化すと、「君は、そんなにしょっちゅうコケては、他人に迷惑をかけているのか?」と、神妙な面持(おも)ちで問い質された。


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