恋愛境界線
* * *
「あれ?渚、まだ来てないの?」
待ち合わせのダイニングバーで席へと通されると、そこには純ちゃんの姿しか見当たらない。
「渚はまだ仕事を切り上げられそうになくて、ちょっと遅れるってメールきた」
そっか、と言いながら首に巻いていたストールを外し、純ちゃんと向かい合わせの席に座る。
久々にタイ料理が食べたくなって、仕事上がりに純ちゃんを誘ったところ、それならと、純ちゃんが渚にも声を掛けたのだ。
「遥は何飲む?」
純ちゃんはドリンクだけ先にオーダー済みらしく、目の前にはオレンジ色の液体が入ったグラスが置かれている。
「ワインは渚が来てからでいっか。純ちゃんのそれ、スプモーニだよね?私も同じのにする」
店員さんにオーダーした後、何を食べるか決める為に二人でメニューを覗き込んだ。