恋愛境界線
「私、生春巻きは必須ねっ」と言うと、純ちゃんは「私はソンタン」と答える。
「いいね、私も食べたいっ!」とテンションが上がりかけたところで、ふと思い出した。
「ごめん、ちょっとメールするね」
純ちゃんに断りを入れてスマホを取り出す。
会社を出てくる時に、若宮課長に今夜は夕飯を外で済ませて帰りますと、メールを送るのを忘れていた。
その文面を作成していると、純ちゃんが「渚に?」と訊ねてきた。
「あー、ううん。渚じゃないんだけど……」
「もしかして、“若宮課長”さん?」
「何でっ!?どうして純ちゃんが若宮課長のことを知ってるの?私、話してない――」
とすれば、考えられるのは渚しかいない。
思った通り、純ちゃんの口からは「ごめん。渚から聞いちゃった」と、渚の名前が出た。