恋愛境界線
渚も揃ったところで、本格的にメニューのオーダーに取り掛かる。
私と純ちゃんが二人で「こっちも捨てがたいよね」などと盛り上がっているのに対し、普段なら自分の食べたい物を主張する渚が、今日は一向に会話に加わってこない。
「渚は?さっきから何も言ってこないけど、お腹でも下してるの?」
「誰がだ。タイ料理ってアレだろ。酸っぱかったり辛かったり、甘かったり臭かったりするだろ。クセがあるっていうか」
酸っぱいのは判る。辛いのも甘いというのも判る。だけど、臭いって何!?
「俺、パクチーとかハーブって、あんまり好きじゃないんだよなぁ」
「じゃあ、今日はどうして来たの?」
本気で疑問に思い、隣の渚を凝視する。
以前から不可解な男だとは思っていたけれど、しかも、そう暇な身でもないだろうに、つくづく行動が理解不能だ。