恋愛境界線

渚も揃ったところで、本格的にメニューのオーダーに取り掛かる。


私と純ちゃんが二人で「こっちも捨てがたいよね」などと盛り上がっているのに対し、普段なら自分の食べたい物を主張する渚が、今日は一向に会話に加わってこない。


「渚は?さっきから何も言ってこないけど、お腹でも下してるの?」


「誰がだ。タイ料理ってアレだろ。酸っぱかったり辛かったり、甘かったり臭かったりするだろ。クセがあるっていうか」


酸っぱいのは判る。辛いのも甘いというのも判る。だけど、臭いって何!?


「俺、パクチーとかハーブって、あんまり好きじゃないんだよなぁ」


「じゃあ、今日はどうして来たの?」


本気で疑問に思い、隣の渚を凝視する。


以前から不可解な男だとは思っていたけれど、しかも、そう暇な身でもないだろうに、つくづく行動が理解不能だ。


< 244 / 621 >

この作品をシェア

pagetop