恋愛境界線
この間の会議室で見た二人の様子からも、そうなんだろうなとは思っていたけれど、実際にそれがハッキリと確定すると、予想はしていても、その事実に何だか足元がグラつく。
自分でも、どうしてこんな気持ちになるのか判らない。
「――くん、芹沢君!」
「うわっ!……は、はい!何でしょうか?というか、どうして若宮課長がここにいるんでしょうか?」
気が付けば、浅見先輩は自分のデスクに戻っていて、私はドアの横で壁に寄り掛かっていたらしい。
「何を言ってるんだ?それにしても、少し目を離すとすぐにサボるんだな、君は」
「それって……、普段は私から少しも目を離してない、ってことですか?」
「訳の判らない上げ足を取らないでくれ。君に目を光らせていることは事実だが」
目を離さないと、目を光らせているでは、相手に対する眼差しのニュアンスが全然違う。
そんなにも自分は課長の中で問題視されていたのかと思うと、がっくりきてしまった。