恋愛境界線
力なく再び壁に寄り掛かって、視線を斜め下に落とした私に、何を勘違いしたのか、僅かに心配してくれている雰囲気を漂わせながら、若宮課長が顔を覗き込んできた。
「……もしかして、どこか具合でも悪いのか?」
悪いのは、具合じゃなくて気分ですよ。
と言ったが最後、確実に、絶対、100%、怒られる。
二人を見てのことだけど、さっきの課長の「すぐサボる」発言に気分を害したと勘違いされそうだし、挙句の果てには、「気分が悪いのは私の方だ」と言い返され兼ねない。
課長に誤解されると知りながら、「違います」ではなく、「大丈夫です」という答えを選ぶ。
すると、やはり私がやせ我慢をしていると勘違いして受け止めたらしく
「それならいいが、もし我慢出来ない様なら医務室に行きなさい」
無理をしても却って皆の迷惑になる場合があるのだから――と、余計な一言まで添えてきた。