恋愛境界線
いちいち言い方が嫌味くさい。もっと他の言い方があるだろうに、と思う。
──でも、それが私に無理をさせない為に、そして、心配してくれているからの言葉だと判ってる。
それくらいには、私だって若宮課長のことをもうちゃんと理解している。
なのに、課長を知れば知るほど、判らないことが増えて行く様な、この感覚がもどかしい。
「医務室に行く気がないのなら、サボらずさっさと仕事に戻りなさい」
「そうやって、何かと言えばすぐにサボってると言いますけど、そういう課長だって――!」
さっきまで支倉さんと二人きりで居たのだって、本当は仕事とは無関係じゃないんですか?
一瞬、そう問い質したい気持ちに駆られたけれど、すぐにハッとして言葉を飲み込んだ。
「私が、どうした?」
「いえ。そういう課長だって……少しくらいはサボったことがあるんじゃないんですか?と」
「あるわけがないだろう。入社してから一度だってない」
結局、『課長だって』と言うことは、やっぱり君はサボっていたわけだな?と、無駄に責められる羽目になった。