恋愛境界線

「あっ……えっ、せ、りざわさん?」


動揺を隠しきれない支倉さんの隣では、若宮課長がほんの僅かに目を見開いている。


すかさずフォローを入れてこない若宮課長に代わって、仕方なく言葉を紡いだ。


「あ、あの、ご苦労様ですっ!あー、えっと、お二人も同期同士、一緒に飲みに行ったりするんですね!」


思ったよりも早口になってしまっている自分に、上手く誤魔化せてないんじゃないかと、余計に焦りが募る。


驚きたいのはこっちなのに、こんな時に手を差し伸べてくれないなんて。


「え、えぇ、まぁ……。同期だと気兼ねなく話せることも多いしね」


続けて、「ところで、芹沢さんはこの辺に住んでいるの?」と訊かれ、心臓が一気に飛び跳ねる。


「えっ!?あー、そうじゃないんですけど、友達がこの辺りに住んでいて」


今日中に渡したい物があって、今からちょっと寄って行こうかと……と、言葉を濁した。


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