恋愛境界線

私のセリフに、支倉さんは疑う素振りも見せず、「そうなの」と、いつもの様に微笑んだ。


上手くこの場を取り繕えたかは定かじゃないけれど、とにかくこれ以上は無理!


「それじゃあ、私はこっちなんで……」と、駅とは反対の方角に向かって、逃げる様にその場を後にした。


若宮課長はというと、わざわざ駅まで支倉さんを送って行ったのか、なかなか帰って来なかった。


ご飯とインスタントのお味噌汁。それから、冷蔵庫に入っていたシュウマイと簡単なサラダで、いつになく質素な夕食を済ます。


こうなったら、さっさと片付けて課長が帰ってくる前に寝てしまおう。


そう思って立ち上がった瞬間、タイミング良く若宮課長が帰ってきた。


「お帰りなさい。……結構、遅かったですね」


あれから40分は経っているから、結構というか、大分、だけれども。


「そうかな?君は夕飯を済ませるのが早いね」


それは嫌味か何かの類ですか?


しれっと、何事もなかったかの様子で答えた若宮課長に苛立ちを感じてしまう。


< 265 / 621 >

この作品をシェア

pagetop