恋愛境界線
「何か言いたいことがある様な顔をしているけれど、言いたいことがあるなら、きちんと言葉にして言いなさい」
「別にありません。若宮課長こそ、私に言うべきことがあるんじゃないんですか?」
「私が?」と言って一瞬視線を逸らした若宮課長は、自分の胸に問い掛けている様な沈黙を作った。
「一つだけ、あることは、ある……な」
「ですよね?」
支倉さんとは、現在どういう関係ですか?なんて、私に訊く権利はないけれど、私だって以前に渚との関係を話したのだから、若宮課長だって少しくらいは支倉さんとの仲を説明してくれたっていいはず。
「さっき、顔を合わせた時の件なんだが――」
きたきたきた!それです!それそれ!と、緊張の余り拳を握り、ゴクリと唾を飲み込む。
「芹沢君、さっき私たちに向かって『ご苦労様です』と言ったよね?」