恋愛境界線

ちょっと待って、何の話ですか?と、口を挟む隙を見つけられないまま、若宮課長が私に向かって話し続ける言葉に耳を傾ける。


「ご苦労様という言葉は、目上の者が目下の者を労う時に使う言葉なのだから、今後は気を付けなさい」


きたきたきた、嫌味の次のダメ出し。とんだWパンチだ。


「はい。お疲れ様でした。おやすみなさい」


もういい。どうだっていい。そんな投げ遣りな気持ちで頭をぺこりと下げる。


大体、あの時は動揺していたから間違えたのであって、普段はちゃんと「お疲れ様です」って言ってるし。


下げた頭の中ではそんな反論を繰り出しながら、肝心なことは話してくれる気のない若宮課長に背を向けた。


「──待ちなさい。テーブルにあるアレは何だ?」


ダイニングテーブルの上に置かれた皿には、グリンピースだけが六つ並んでいる。


それは、元々は私が食べたシュウマイの上に載っていた物だ。


「課長に対する嫌がらせです。以上」



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