恋愛境界線
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癇癪(かんしゃく)を起して部屋に閉じこもった次の日は、顔を合わせるのが物凄く気まずくて――


「……おはようござい、ます」


一緒に暮らしている以上は仕方なく、おずおずと課長の前に顔を出すと、若宮課長はチラリと私を見た後、いつもと何ら変わりのない態度で挨拶を返してきた。


「お早う。芹沢君も食べる?」


食パンの入った袋を軽く持ち上げて見せた課長に、「はい」と答える。


若宮課長は、自分の分を含めた食パン二枚をトースターにセットしている。


その傍らで私は、サーバーから自分のマグカップへコーヒーを移し、1:1の割合になる様に牛乳で割り、その場に立ったまま、早速一口だけ啜る。


ホッと息を吐き出したことで緊張が解れると、若宮課長の方に顔を向けた。


「……課長、昨日はすみませんでした」


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