恋愛境界線
「何が?……あぁ、アレのことか」
わざわざ私の嫌いなグリーンピースを残して置いてくれたこと――と言って惚けた。
いや、若宮課長のことだから、惚けているんじゃなくて、案外本気でそう思っているのかもしれない。
「それもですけど、一人で勝手にイライラして、八つ当たりみたいなことをしてしまったので……」
「八つ当たりみたいなこと、じゃなくて、八つ当たりそのものだったと思うけど?」
嫌味ったらしい口調で言われても、さすがに今日は申し訳ないという気持ちしか湧いてこない。
「はい……。だから、すみませんでした」
項垂れる様に下を向いていた私に、課長の噛み殺した様な笑い声が降り注いだ。
「君の良いところは、その素直さだな」
「……え?」
「いや。君のことだから、昨夜は私だけが旨い物を食べて、自分は質素な食事だったからずるいとか、私にしてみれば理不尽極まりない理由で、八つ当たりしてきたんだろう?」