恋愛境界線
唐突に核心を突いてきた若宮課長に、危うく口の中の物を霧吹きの様に吹き掛けそうになり、それを寸前で堪えた結果、咽せ返ってしまい、私のシャツは大惨事に。
ゲホッ、ゴホッ、と野太い咳が止まらず涙目になっている私に、課長がティッシュボックスを差し出してきた。
「君は一体何をしてるんだ?」
「だ、って……課長が、急にっ、変、な……ゲホッ」
「変なのは君であって、私は変なことなどしてもいなければ、言ってもいない」
恨みがましく課長に視線を向けながら、口元や胸元を拭いたティッシュを丸める。
「で、支倉さんのこと、話してくれるんですか?」
「話すも何も、君は僕たちの関係を知ってるんだろう?」
「そんなの、婚約までしてたって……こと、くらいしか知らないです」
「そう。彼女とは同期で、以前、婚約まではしていたけれど、結婚までは行かなかった――それが全てだ」