恋愛境界線
それが全てって、じゃあ今は?
心の中で課長に向かって問い掛ける。
食事を終え、フォークを静かに皿の上に置いた若宮課長が、私の方へと手を伸ばしてきた。
一瞬、手を重ねられるのかと思い、身体をビクリと揺らしてしまったけれど、その手は私のすぐ側にあったティッシュボックスへと伸ばされただけで、課長はそれで軽く口元を拭った。
「君は、僕と泉との関係を既に知っていたというのは判ったが、一体何に対してあんな風に怒っていたんだ?それだけが判らない」
『……若宮課長、全然話してくれないじゃないですか』
「それは……っ、」
支倉さんと、よりを戻したんですか?だから、昨日は二人きりで飲みに行ってたんですか?
そう訊きたいけれど、課長のことを好きだと自覚してしまったから、逆に訊くことが出来ない。
「えっと……、だから、私は渚の話をしたのに、若宮課長は支倉さんとのことを、私に隠してた……から……」