恋愛境界線
無論、ハムは人間の言葉を喋られないから、私の問い掛けに答えることはない。
ご飯にありつくハムの隣で、私も買ってきたご飯を黙々と食べた。
それも早々に終えると、今度は時計が気になって仕方がない。
「ハムー、ここの主は、一体何時に帰ってくるんだろうね?」
時刻は、まだ21時というべきか、もう21時というべきか。
帰ってくる時間がはっきりと判っていれば、こんなに気を揉んだりはしないのに……。
「まさか、朝帰りとかないよね!?ね?どう思う!?ハム、何とか言ってよー」
ケージをがしり、と両手で掴んで、中に居るハムを覗き込んだ瞬間、玄関の方でガチャリと鍵の回る音がした。
反射的に立ち上がり、気付けば足は勝手に玄関へと向かって駆け出していて――。
「お帰りなさい!」
ドアが開いて、若宮課長が玄関に一歩足を踏み入れるなり、そう言って課長を出迎えた。