恋愛境界線
「わっ!な、何だ君は。犬じゃあるまいし、突然勢い良く飛び出してくるなんて……ビックリするじゃないか」
今まで課長を出迎えたことなんてなかったのに、急にそんなことをした自分が恥ずかしくなる。
こんな態度じゃ、課長に気持ちを気付かれるのも時間の問題かもしれない。
「えっと……、暇だったので、ちょっとビックリさせたくなっただけです」
そう言って、課長より先にリビングへ戻る。
すると、視界に映った光景はたった数秒前のものとは変わっていて、テレビの前に置かれたローテーブルの上は、ちょっとした大惨事になっていた。
今日の分の新聞がところどころ破れ、課長の読みかけの雑誌は私の飲みかけの缶チューハイでびしゃびしゃに。
それがテ―ブルの下まで滴り落ちて、ラグをバッチリ濡らしている。
見れば、ケージの中にいたはずのハムの姿がない。
犯人はお前か!な心境で、テーブルの下を勢い良く覗き込む。
「芹沢君?何をしてるんだ?」