恋愛境界線

そんな、仕事もプライベートも充実している中で、大きなプロジェクトに関わることになった二人は、ごく当たり前の流れで、プロジェクトが成功して一段落したら結婚しようと、考える様になったのだとか。


そこから先は、渚や浅見先輩から耳にしていた話が織り交ぜられていた。


プロジェクトで支倉さんは、今回の私の様なミスを犯してしまい、それを若宮課長が庇った。


「若宮課長、そういう所は男前というか、惜しみなく優しいですよね」


「でも私の場合、若宮くんに庇ってもらえたことは嬉しい反面、すごく悔しかったなぁ……」


思い出し笑いでもするかの様な口調の支倉さんは、けれど表情は全然笑ってなくて、とても寂しそうに見えた。


「自分の不甲斐なさが悔しくて、好きな人に仕事のことで庇われたことが悔しくて、そんな時だったの」


──若宮くんに、正式にプロポーズされたのは。


その言葉に、思わず視線を支倉さんへと向ける。


支倉さんからプロポーズするというイメージはなかったけれど、だからといって若宮課長からというイメージも、すぐには湧かなかった。


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