恋愛境界線
「あの……、それで支倉さんと若宮課長って、今はまたお付き合いしてるんですか?」
どうせ傷つくならこの際一気にまとめての方がいいと、思い切って口にした。
「ううん、付き合ってはいないわ。でも、最近になってようやく、また以前みたく接することが出来る様になってきたの。それがすごく嬉しくて、自分勝手だとは思うけど……その、そうなれたら良いなと思ってる」
控え目だけど、陰りなくそう話す声や微笑んだ表情からは、本当はどうしようもなく嬉しいことが伝わってくる。
きっと、今の支倉さんは仕事もプライベートも充実しているんだと思う。私とは違って、これから先の関係に、展望を抱けるだけの絆が、課長との間に存在している人だから。
「支倉さんなら、きっと上手くいきますよ」
美味しいはずのご飯が喉を通らない。
綺麗で、性格も良くて、仕事も出来て、私の何倍も女性らしくて。
全てが揃っているのに、それがちっとも嫌味じゃなくて。
何より、あの若宮課長にプロポーズまでさせた人。
その上、嫌いになって別れた訳でもないのなら
私には勝ち目がないどころか、二人の関係に入り込む隙さえない。
それを、改めてはっきりと思い知らされた気がした。